熊野古道の”死の道”Death Road


熊野三山散策に赴いたのは2002年の真夏のことだった。

その一昨年前に大阪から琵琶湖まで歩く旅をやって
そろそろ次のツアーを行いたいと思っていた頃。

村上春樹の「雨天炎天」を読んで影響を受けたのも大きかった。
さすがにギリシャ正教の聖地・アトス山まで行く勇気も時間もお金もなかったから
近場で少々ハードに歩き回れる聖地的な場所はないか・・・と考えていたところに、
これまた丁度読んでいた「平家物語」にも登場する”熊野詣”を思いついた。


かつて祭政一致にも似た支配が行われた熊野がすぐそこにあるじゃないか


このように歴史的関心とカラダを痛めつけるために熊野古道巡りに向かうことになったわけで
敬神的な動機でもなければ、世界遺産に認定(2004年)される前に駆け込みで・・・、
そんなミーハー(死語)な理由でもなかった。
(※ちなみに、「水曜どうでしょう」の影響でもない。当時はそんな興味なかった)

kumano8.jpg

平安末期に上皇や公家らが行ったことで知られるようになった熊野詣は
九十九王子と呼ばれる小さな社を順に辿って大阪から紀伊半島へと南下し、
紀伊田辺から山間に入って熊野本宮大社を目指したのだが
現在行われるオーソドックスな熊野古道ツアーと言えば
滝尻王子から本宮大社まで約40kmの山道を1泊2日で歩くもの。

ちょっと日数に余裕があったので
「中辺路(なかへち)」と呼ばれる紀伊田辺から熊野本宮大社まで約70kmを
王子を辿りながら2泊3日ぐらいで歩くのをメインとして、
それから新宮、那智へと回る計画を立てた。

そんな熊野古道の中で体力的に辛いのは滝尻王子~本宮大社までの山道で
かなりのアップダウンがある。

しかし、そんなオーソドックスなコースよりも恐ろしかったのが
紀伊田辺市を抜けた後、311号線・岩田川沿いに歩く道。

kumano2.jpg


ここは”死の道”Death Roadと呼ぶべきだ・・・

紀伊田辺駅から歩き始めた第一日目の終了が
丁度この311号線沿いの鮎川王子付近だった。

時計はもう午後6時を過ぎて辺りは暗くなり始め、
ここらで切り上げようか思案していた頃、
左手の山中の頭上から何かの動物のすごい鳴き声が聞こえてきた。

とっさに野生のサルだと思った。
姿は見えないけどすぐ近くで威嚇するように鳴いている・・・。

ビジネスホテルの予約をとってある紀伊田辺に戻るため
バス停でバスを待っている間ずっとものすごい鳴き声が響き渡っていて、
どこかから襲ってくるのではないかと気が気でならなかった。

これが富田川沿い・311号線を”死の道”と呼びたい理由その一。


そして翌日はバスで同じ停留所まで戻って来て
今度は311号線から離れて富田川沿いの右手の山の縁を歩くことになるのだが
歩いてゆくとどんどん道が細くなって・・・無くなった(笑えない)

ここが熊野古道で間違いないと思うのだが
前は藪で右手は完全に山中で左手はすぐ川で明らかに危険だ。

kumano_20180526223319c7c.jpg

便利なことに現在ではグーグルマップのストリートビューで同じ場所を見られるが
これは2016年に撮影されたもので当時はもっと荒れた道だった。

どう見ても道になっていなかった。
しかも容易に川に滑り落ちそうでもある。

自分の他には誰も歩いている者は見かけないし、
いくら何でもここは21世紀の日本人が歩いてよい場所ではなさそうだ。

そう思って引き返し、橋を渡って311号線を滝尻まで歩くことにした。
だからここから滝尻までの区間は熊野古道を歩けなかった。

熊野古道、全く整備してへんやないか

僕は歩きながら
当時の行政区画であった大塔村に腹を立てていた。

現在は合併によって大塔村は消滅しているけど
この事態は大塔村のせいばかりではなく、
そもそも富田川沿いの熊野古道の実態というものが歴史的に判然としないらしい。

グーグルマップで見るとわかるが
富田川沿いは大雨で増水ししばしば氾濫する地域でもあったことから
富田川を遡上するルートは中世の時代に早くも途絶え、
峠越えして滝尻に向かう、より安全なルートが開かれていたという。

そんな理由もあって熊野古道と言っても
この辺りは世界遺産に認定されなかった。
どおりで大塔村もヤル気がなかったわけだ。

道なき古道、しかも左手すぐ川!

この時の恐怖感が、富田川沿い311号線を
”死の道”Death Roadと呼ばしめるもう一つの理由だ。

「道なきを道を往く」なんて簡単に言うけれど
本当の意味で実際にそういった事態に遭遇したら
そんな生易しいものじゃないんだよ。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

E

Author:E
数年勤めた会社を辞めて、某資格受験生活に入るも挫折したまま三十路をいくつか超えた無職。いい加減何とかしたいが、まだ何とかなると余裕があったりで、資格の勉強+ケータイ無しの直感のみでせどりする日々。あくまで、息抜き・趣味・リハビリとしてのセドリなので、売上はショボいです。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
FC2カウンター
検索フォーム
RSSフィード
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる