一大センセーションを巻き起こした男がいた

田舎、田舎と
まるで田舎を揶揄するかのようなことを書いたけど
安心してください。

僕が住んでいる地域も
大阪の中でしばしば田舎呼ばわりされてきた土地ですから。

小学校5年の時だろうか。
転校生のT君がやって来たのは。

T君は転校してきたその日に
クラスのリーダー格の子にいきなり挨拶代わりのギャグをかました。

後から思うとそれは吉田ヒロ風のギャグだったけど
こちらでは吉田ヒロなんかまだ誰も知らなくて
ただただおちょくられているとしか受け取りようもなく
リーダー格の子は怒りのあまりプルプルと震えていた。

T君は転校生やから何もわかってへんわ・・・

その様子を見た僕は
学校の帰りにT君にそれとなく忠告してやった。
「彼はクラスで一番力強いから、あんなことやったらアカンで」

しかし、T君には確固たる自信があったのだろう。
僕の小市民じみた忠告なんか歯牙にも掛けずに
次の日も相変わらず、誰彼かまわずに吉田ヒロ風のギャグを連発していた。

こんな風に当初こそちょっとおかしな子と見られていたT君だが
そのやることなすこと全てが、
田舎じみた僕らの次元を遥かに超えた、流行の先端を行くセンスの持ち主だと気づくまでに
それほど時間はかからなかった。

例えば、丁度その頃、ジージャンが流行っていた。
田舎とされる当地でもジージャンを着る子は多かったけど
みんなはただジージャンを着るだけだが
T君の着こなしは僕らとは一味違うもので
袖をまくって裏地のチェック柄を見せたり
(つまりジージャン購入する時点で裏地の柄で選んでいた。小5の男子が!)
靴、靴下、帽子と合わせてコーディネートというものをはかったりする。
そういうのって僕らでは逆立ちしても出てこない発想だった。

T君の口癖が「おまえらだっさい(ダサい)のうー」だ。
そう言われないようにと
皆がT君のファッションを真似るようになっていった。
それまで田舎の子丸出しだったのが、みんな急速に色気づきだした。

当時売れ始めていたダウンタウンが面白いと教えてくれたのもT君だった。
T君のおかげで僕らは『四時ですよーだ』という番組を知り
番組開始の早い時期から付いていくことが出来た。
みんな番組を見るために急いで下校した。
T君が転校してこなかったら、当地におけるダウンタウンの受容はもう少し遅れたかもしれない。

次第にT君が身に着けるモノやら勧めるモノはこぞって何でも取り入れるようになっていった。

僕が高井麻巳子のレコードを買ったのも
T君が「高井麻巳子ええわ~高井麻巳子ええわ~」と言うからだ。

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「ええやろ?」
「う、ううん・・・ええな・・・(ええか?)」

自分で購入した最初で最後のレコードだった。
2,3回ぐらいしか聴いてないけど(でも冒頭だけ覚えてる)。

こんな具合に一大センセーションを巻き起こし
クラスの雰囲気をガラッと変えた転校生・T君の存在を煙たがったのが担任の先生だった。

T君は先生に対しても何かと反抗的なところがあり、
それは田舎の純朴な子たちと大差ない僕らにはなかったことだから。


この生意気なクソガキのせいで
まとまっていたクラスがすっかりおかしくなってしまった・・・



先生もさぞかし苦々しく思っていたことだろう。
ある日の「終わりの会」でついに自ら攻撃に出た。
T君の日頃の罪状を並べ立てて吊し上げにし、
徹底的に集中砲火を浴びせたのだ。
(終わりの会は通常、生徒が生徒を告発し謝罪を求めるもので、これは異例なことだった)

いつものように反抗的な態度を示したT君も最後には降参した。
泣きながら「ごめんなさい」(←終わりの会の恒例。わかる人どれだけいるだろう?)

その日以来、一時は彼中心にクラスが回っていたと言えるほどだったT君の求心力は
明らかに低下していった。

おそらく大阪ミナミに出入りして身につけたT君のセンスに付いていく困難さだとか、
そろそろ飽きがくる時期でもあったのかもしれない。

T君の周囲にはそれに付いていける人間だけが残っておしゃれグループを形成し
他は皆それぞれの趣味や程度に応じたポジションへと散っていき、
クラスは再び平穏を取り戻した。

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Author:E
数年勤めた会社を辞めて、某資格受験生活に入るも挫折したまま三十路をいくつか超えた無職。いい加減何とかしたいが、まだ何とかなると余裕があったりで、資格の勉強+ケータイ無しの直感のみでせどりする日々。あくまで、息抜き・趣味・リハビリとしてのセドリなので、売上はショボいです。

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